中小企業向け越境EC入門

初めての越境EC:商品を海外で販売する際の「規制・許認可」リスクと確認ステップ【中小企業向け】

Tags: 越境EC, 商品規制, 輸出規制, 輸入規制, リスク管理, 経営判断, 中小企業

越境ECへの挑戦を検討されている中小企業の経営者の皆様、こんにちは。

「中小企業向け越境EC入門」サイトでは、初めて越境ECに取り組む皆様が、安心して海外展開を進めるための情報を提供しています。

越境ECで商品を海外のお客様にお届けする際、サイト構築や集客だけでなく、非常に重要な確認事項があります。それは、販売しようとしている商品が、お客様の国の法律や規制に適合しているか、ということです。

これは、越境ECを成功させる上で避けては通れない課題であり、経営判断として把握しておくべき重要なリスク要因でもあります。本記事では、越境ECにおける商品規制・許認可について、中小企業の皆様が知っておくべき基本と、具体的な確認ステップ、そしてそれに伴う経営判断のポイントを解説します。

なぜ越境ECで商品規制・許認可の確認が重要なのか

越境ECで商品を海外に販売する際、販売先の国、そして場合によっては商品を輸送する経由国の法律や規則に従う必要があります。これらの規制には、輸出国(日本)側の規制と輸入国側の規制の両方が含まれます。

これらの規制や必要な許認可を確認せずに商品を輸出しようとすると、以下のような様々なリスクに直面する可能性があります。

これらのリスクは、特に経営資源が限られている中小企業にとっては大きな打撃となり得ます。したがって、商品が対象国の規制に適合するかどうかの事前確認は、越境EC事業を開始する前の、あるいは少なくとも対象市場を選定する段階で行うべき不可欠なステップと言えます。

越境ECで商品にかかる主な規制・許認可の種類

商品にかかる規制や許認可は、商品の種類や対象国によって多岐にわたります。代表的なものをいくつかご紹介します。

  1. 輸出規制:

    • 日本から特定の品目を輸出する際に課される規制です。武器や大量破壊兵器に転用可能な技術・貨物など、安全保障上の観点からの規制(輸出貿易管理令など)があります。
    • 多くの一般消費財は該当しませんが、自社の商品が該当しないか念のため確認が必要です。
  2. 輸入規制・通関手続き:

    • 海外の国が自国への商品の持ち込みに対して課す規制です。これが越境ECにおいて最も注意すべき点の一つです。
    • 国によって輸入が禁止されている品目(例: ワシントン条約で保護されている動植物関連製品、偽造品など)や、輸入に特別な許可や手続きが必要な品目があります。
  3. 特定製品に対する基準・認証:

    • 食品、化粧品、電気製品、玩具、医療機器など、特定のカテゴリの商品には、対象国が定める安全基準や品質基準への適合が求められる場合があります。
    • 基準を満たしていることを示す認証マーク(例: EUのCEマーク、米国のULマークなど)の取得や、特定の試験データの提出が必要になることがあります。
  4. 成分・配合規制:

    • 化粧品や食品など、商品の成分や配合量に制限がある場合があります。日本で合法的に販売できる成分でも、海外では使用が禁止されていたり、配合量に上限があったりすることがあります。
    • 特に化粧品は、国によって配合禁止成分や配合上限が大きく異なるため、注意が必要です。
  5. 表示・ラベリング規制:

    • 成分表示、原産国表示、使用上の注意、アレルギー情報など、商品のパッケージやラベルに表示すべき内容や方法について、国ごとに詳細なルールが定められている場合があります。
    • 言語指定やフォントサイズ、表示義務のある情報などが異なります。
  6. 知的財産権:

    • 自社の商品やブランド名が、対象国で既に登録されている商標や特許を侵害していないか確認が必要です。意図せず他社の権利を侵害した場合、訴訟リスクや商品の販売停止命令を受ける可能性があります。(これについては別途記事で詳しく解説しています)

これらの規制は、それぞれの国の政策や安全基準によって定められており、非常に複雑です。自社の商品がどのカテゴリに該当し、どのような規制の対象となる可能性があるのかをまず把握することが重要です。

商品規制・許認可を確認する具体的なステップ

では、具体的にどのように商品規制・許認可を確認すれば良いのでしょうか。初心者である中小企業の皆様が取り組みやすいステップをご紹介します。

ステップ1:対象国と販売商品を明確にする

まずは、どの国に、どのような商品を販売したいのかを具体的に特定します。ターゲット市場が漠然としていると、確認すべき規制が広範になりすぎてしまいます。最初は1〜2カ国に絞ることをお勧めします。

ステップ2:JETRO(日本貿易振興機構)の情報を調べる

JETROは、日本企業の海外ビジネス支援を行っている公的機関です。各国・地域別の「貿易・投資に関する情報」や「輸入規制・税制」に関する情報をウェブサイトで公開しています。

JETROの情報は公的な情報源として信頼性が高く、多くの初心者にとって最初の情報収集先として最適です。

ステップ3:対象国の政府機関ウェブサイトを確認する(可能であれば)

JETROの情報は概要を掴むのに役立ちますが、より詳細な情報は対象国の関係省庁(商務省、保健省、農業省、工業省など)のウェブサイトに掲載されています。

ただし、専門用語が多く、情報が膨大であるため、このステップだけで全ての情報を得ることは難しいかもしれません。

ステ4:越境ECの物流パートナーや専門家に相談する

自社だけで全ての規制情報を網羅的に把握するのは現実的ではありません。そこで、越境ECの物流を担うフォワーダー(国際輸送業者)や、越境EC支援を行う専門家(コンサルタント、行政書士、弁護士など)の知見を活用することを強くお勧めします。

これらの専門家への相談には費用が発生しますが、後々のトラブルを回避し、安心して事業を進めるための必要経費として検討すべきです。

経営判断の視点:規制・許認可リスクをどう評価するか

商品規制・許認可の確認を通じて、自社の商品が抱えるリスクが見えてきます。この情報を経営判断にどう繋げるかが重要です。

これらの判断は、自社の経営資源、リスク選好度、事業の目標などを総合的に考慮して行う必要があります。

まとめ:事前の確認が越境EC成功への第一歩

越境ECにおける商品規制・許認可の確認は、サイト構築やマーケティングといった目に見える作業に比べて地味に感じられるかもしれません。しかし、これは後々の重大なトラブルを防ぎ、事業を継続・拡大していくための土台となる非常に重要なプロセスです。

中小企業の場合、社内に専門的な知識を持つ担当者がいないことが一般的です。しかし、だからといってこの確認を怠ると、思わぬ落とし穴にはまるリスクが高まります。

まずはJETROのような公的機関の情報を活用し、必要に応じて越境ECに詳しい物流パートナーや専門家のサポートを得ながら、自社の商品が対象国のルールに適合するかどうかを丁寧に確認してください。

この事前の確認こそが、リスクを最小限に抑え、越境EC事業を成功に導くための重要な第一歩となります。