【経営判断】越境ECは自社に必要か?始める前に確認すべき3つの重要視点【中小企業向け】
越境ECに関心をお持ちの中小企業経営者の皆様へ
「海外市場への展開に興味はあるが、具体的に何から考えれば良いか分からない」「自社にとって越境ECは本当に有効なのか判断できない」といったお悩みをお持ちではないでしょうか。越境ECは新たな販路開拓の可能性を秘める一方、国内ECとは異なる様々なハードルが存在します。
本記事では、越境ECを「始める」という経営判断を下す前に、皆様がご自身のビジネスについて確認すべき3つの重要な視点を解説します。これらの視点を通じて、貴社が越境ECに取り組むべきか、どのような準備が必要かといった検討の第一歩を踏み出すことができるでしょう。
越境EC検討の第一歩:経営者が確認すべき3つの重要視点
越境ECへの挑戦を具体的に検討するにあたり、まずは以下の3つの視点から自社の状況を客観的に見つめ直すことが重要です。
- 「なぜ越境ECなのか?」貴社の強み・商品・サービスは海外で通用するか?
- 「必要なリソースはあるか?」ヒト・モノ・カネ、社内体制をどう作るか?
- 「リスクをどう捉え、最小限に抑えるか?」国内とは異なるリスクへの備えは?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
視点1:「なぜ越境ECなのか?」貴社の強み・商品・サービスは海外で通用するか?
越境ECに取り組む最も根本的な理由、それは「海外市場にニーズがあり、自社の商品・サービスがそこで受け入れられる可能性があるから」であるはずです。この可能性を見極めることが最初のステップです。
国内で支持されている商品であっても、海外の顧客にそのまま受け入れられるとは限りません。ターゲットとする国の文化、習慣、嗜好、競合環境などを考慮する必要があります。
- 自社商品の特性の棚卸し: 貴社の商品やサービスが持つ独自の強みは何でしょうか?(例:高品質な素材、独自の技術、伝統工芸、革新的なデザイン、環境への配慮など)これらの強みが、特定の海外市場で評価される可能性はありますか?
- ターゲット市場のニーズ調査: 想定する国や地域で、貴社の商品カテゴリーに対するニーズはどの程度あるでしょうか?競合は存在しますか?価格帯はどうなっていますか?簡易的な調査であれば、インターネット検索や現地のECサイトを参考にしたり、ジェトロ(日本貿易振興機構)のような公的機関に相談したりすることも有効です。
- 「ローカライズ」の可能性: もし貴社の商品を海外で販売する場合、どのような「ローカライズ」(現地の言語、通貨、文化、習慣に合わせて商品やサービス、情報などを調整すること)が必要になりそうでしょうか?商品名の翻訳、パッケージデザインの変更、取扱説明書の現地語化など、対応が必要な範囲をざっくりと把握しておきます。
この視点では、「なんとなく海外に売りたい」という漠然とした考えから一歩進み、「自社の商品が海外の誰に、どのように役立つのか」を具体的にイメージすることが大切です。
視点2:「必要なリソースはあるか?」ヒト・モノ・カネ、社内体制をどう作るか?
越境ECの運営には、ヒト・モノ・カネといったリソースが必要です。特に中小企業にとっては、既存業務との兼ね合いでこれらのリソースをどのように確保するかが大きな課題となります。
- 人材: 越境ECサイトの構築・運用、海外顧客とのコミュニケーション(メール対応など)、海外発送の手配、法規制や税金に関する情報収集など、多岐にわたる業務が発生します。これらの業務を社内の誰が担当できるでしょうか?既存の従業員で対応可能か、新たに採用が必要か、あるいは外部の専門家に委託するか、検討が必要です。越境ECに関する知識はゼロでも、基本的なPC操作が可能で、学ぶ意欲のある方がいれば、その方を中心に体制を構築することも考えられます。
- 資金: 越境ECサイトの構築費用、プラットフォーム利用料、海外プロモーション費用、翻訳費用、物流費、関税・消費税の立て替え、返品対応費用など、様々な費用が発生します。初期投資としてどの程度の資金が必要か、また継続的な運用コストはどのくらいかかるか、概算でも良いので試算してみましょう。公的な補助金の活用も検討の余地があります。
- 時間: 越境ECは、始めてすぐに大きな成果が出るものではありません。市場調査、サイト構築、プロモーション、運用改善など、腰を据えて取り組むための時間的な余裕が必要です。経営者自身がどこまで関与するのか、担当者にどこまで権限を委譲するのかなども考慮する必要があります。
この視点では、理想論だけでなく、貴社の現状のリソースを冷静に分析し、越境ECに取り組むための現実的な体制構築が可能かを判断します。全てを自社で賄う必要はなく、外部の力を借りる選択肢も視野に入れることが重要です。
視点3:「リスクをどう捉え、最小限に抑えるか?」国内とは異なるリスクへの備えは?
越境ECには、国内ECにはない特有のリスクが存在します。これらのリスクを事前に理解し、対策を検討しておくことが、安定した運営には不可欠です。
主なリスクとして、以下のようなものが挙げられます。
- 物流リスク: 海外配送中の紛失、破損、遅延。また、国によって異なる配送事情への対応。
- 決済リスク: クレジットカードの不正利用、為替変動による収益への影響。
- 法規制・税金リスク: 各国の輸入規制、消費税、関税などの複雑な手続きや変更への対応。知らずに法規制に違反してしまう可能性。
- コミュニケーション・文化リスク: 言語や文化の違いによる顧客との誤解、クレームへの対応の難しさ。
- 返品・返金リスク: 海外からの返品に関するコストや手続きの煩雑さ。
- 為替変動リスク: 為替レートの変動により、利益が変動する可能性。
これらのリスクを全て完全に排除することは難しいですが、リスクを認識し、対応策を検討しておくことは可能です。
- 情報収集: ターゲット国の法規制や商慣習に関する情報を収集します。ジェトロや大使館などの公的機関、越境ECの専門家などに相談するのも良いでしょう。
- 外部サービスの活用: リスクの高い業務(例:物流、決済、法規制対応)は、専門の外部サービスを利用することで、自社の負担やリスクを軽減できます。
- スモールスタート: 最初から大規模な投資を行うのではなく、一つの国・地域に絞る、取り扱う商品を限定するなど、リスクを抑えた「スモールスタート」を検討します。これにより、リスクを限定しつつ、越境ECの経験を積むことができます。
この視点では、リスクを恐れて挑戦しないのではなく、リスクを正しく理解し、それに対する現実的な対策を講じることで、リスクをコントロールしながら越境ECを進められるかを判断します。
まとめ:越境ECは貴社にとって最良の選択肢か?
越境ECを始める前に確認すべき3つの重要視点について解説しました。
- 貴社の強み・商品・サービスは海外で通用するか?
- 必要なリソース(ヒト・モノ・カネ)はあるか?
- リスクをどう捉え、最小限に抑えるか?
これらの視点から自社を検討することで、「越境ECに挑戦する」という経営判断に必要な材料が整理されたことでしょう。すぐに「始める」という結論に至らなくても全く問題ありません。むしろ、これらの視点から「今はまだ時期尚早」「まずは国内市場で基盤を固めるべき」「別の海外展開手法(例:現地の小売店への卸売など)を検討すべき」といった判断に至ることも、重要な経営判断の一つです。
もし、これらの視点を検討した結果、「越境ECに挑戦する価値がある」と感じられたのであれば、次に具体的な「ステップ」に進む準備ができたことになります。
このサイトでは、越境ECの具体的な始め方や各ステップでの注意点について、引き続き分かりやすく解説してまいります。まずはこれらの3つの視点から、貴社の越境ECへの可能性をじっくりとご検討いただければ幸いです。