中小企業向け越境EC入門

越境ECサイト公開後の成果改善をどう進めるか?経営者が知るべきデータ活用の基本【中小企業向け】

Tags: 越境EC, データ分析, サイト運用, 経営判断, 成果改善, 中小企業

越境ECサイトの公開は、海外ビジネスの始まりです。サイトを立ち上げた後、どのようにすれば売上を伸ばし、事業を継続的に成長させられるのか、多くの経営者の方が関心をお持ちのことと存じます。そのためには、サイトが公開された後に得られる様々な「データ」を読み解き、改善に活かすことが非常に重要になります。

このデータ活用は、単に数字を眺めることではありません。貴社の越境EC事業の現状を正確に把握し、次に打つべき施策を判断するための羅針盤となります。本記事では、越境ECサイト公開後に経営者が知っておくべきデータ活用の基本と、成果改善に向けた具体的なステップ、そして経営判断におけるポイントについて解説します。

越境ECサイト公開後、なぜデータ活用が重要なのか?

越境ECサイトは公開しただけで、すぐに大きな成果が得られるとは限りません。海外の顧客は日本の顧客とは異なる行動を取り、異なるニーズを持っています。貴社のサイトがターゲット市場の顧客にどのように受け入れられているのか、何が課題となっているのかを客観的に把握する必要があります。

データ活用は、以下の目的のために不可欠です。

  1. 現状の正確な把握: サイトへのアクセス状況、顧客の行動、売上につながっている経路、課題となっている箇所などを具体的な数値で把握できます。
  2. 課題の特定と原因分析: 例えば、「サイトへのアクセスは多いが、購入に至らない」といった状況の場合、どこに問題があるのか(商品ページが見にくい、決済方法が少ない、送料が高いなど)をデータから推測できます。
  3. 改善策の効果測定: 施策を実施した後、その効果があったかどうかをデータで確認できます。これにより、費用対効果の高い施策に注力できるようになります。
  4. 経営判断の根拠: 限られた経営資源(時間、人員、資金)をどこに投じるべきか、データに基づいた客観的な判断が可能になります。

経営者が最低限把握すべき越境ECの基本データ

データ分析と聞くと、専門的な知識が必要だと感じられるかもしれません。しかし、経営者としてまず抑えるべきは、事業の成果に直結する基本的な指標(KPI: Key Performance Indicator、重要業績評価指標)です。以下に、特に重要なデータをいくつかご紹介します。

これらのデータは、Google Analytics™(Googleが提供する無料のアクセス解析ツール)のような一般的なツールで確認できます。ツールの詳細な操作方法まで把握する必要はありませんが、基本的なレポートの見方や、上記の指標が何を意味するかは理解しておくことをお勧めします。

データから課題を読み解く:基本的な考え方

データを見ることの目的は、単に数字を知るだけでなく、そこから「なぜこうなっているのか?」という問いを立て、課題を見つけ出すことです。

例えば、以下のような状況がデータから読み取れたとします。

データ分析は、これらの「なぜ?」の仮説を立てる手助けをしてくれます。重要なのは、一つのデータだけでなく、複数のデータを組み合わせて見ることです。例えば、「アクセス元」と「コンバージョン率」を一緒に見ることで、どの集客チャネルからの顧客が購入につながりやすいかが分かります。

データに基づいた成果改善の具体的なステップ

データから課題が見えてきたら、次はその課題を解決するための具体的な施策を検討・実行します。改善は一度行えば終わりではなく、継続的な取り組みが重要です。

  1. 課題の明確化: データ分析で特定した課題を具体的に定義します。「コンバージョン率が低い」だけでなく、「商品詳細ページからの離脱率が高く、それがコンバージョン率低下の主要因の一つである」のように、より具体的にします。
  2. 改善策の検討: 特定された課題に対して、どのような改善策が考えられるかを検討します。例えば、商品詳細ページからの離脱率が高い場合は、以下のような施策が考えられます。
    • 商品写真や動画を追加・改善する。
    • 商品の特徴やメリットを分かりやすく伝える説明文にする(必要であれば、ローカライズを見直す)。
    • 顧客の声(レビュー)を掲載する。
    • 関連商品やおすすめ商品を提案する。
    • 購入ボタンを分かりやすい位置に配置する。
    • ページの読み込み速度を改善する。
  3. 改善策の優先順位付けと実行: 複数の改善策が考えられる場合、すべての施策を同時に行うのは難しいことがほとんどです。データから推測される課題の根本原因や、実施にかかるコスト(時間、費用、人員)、期待される効果の大きさなどを考慮して、どの施策から優先的に行うかを判断します。最初から大きな変更を行うのではなく、リスクの低い小さな改善から始める「スモールスタート」も有効です。
  4. 効果測定: 改善施策を実行したら、その施策が目標達成にどの程度貢献したかをデータで測定します。施策実行前後のデータを比較したり、特定の施策による影響を限定的に検証したりします。この効果測定によって、施策が成功だったか失敗だったかを判断し、次に繋げます。
  5. 次の課題発見と施策立案(PDCAサイクル): 効果測定の結果を踏まえ、当初の課題が解決されたか、新たな課題はないかを確認します。そして、次の改善ステップへと繋げます。この「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のサイクル(PDCAサイクル)を繰り返すことで、継続的な成果向上を目指します。

データ活用における経営判断のポイント

データは経営判断のための重要な材料ですが、データが全てを語るわけではありません。経営者としては、データが示す客観的な事実と、市場環境、競合状況、自社の経営資源、そして貴社のビジネスに対する洞察を組み合わせて判断を下す必要があります。

まとめ

越境ECサイトの公開はスタート地点であり、その後の継続的な成果改善が事業成功の鍵を握ります。そのためには、サイトから得られる様々なデータを経営判断の材料として活用することが不可欠です。

まずは、アクセス数、売上、コンバージョン率といった基本的な指標を定期的に確認することから始めてみてください。データが示す数値から「なぜこうなっているのか?」という問いを立て、課題の仮説を構築します。そして、その課題に対する改善策を実行し、効果測定を行うというPDCAサイクルを回していきます。

データは、貴社の越境EC事業が海外市場でどのように受け入れられているかを示す貴重な声でもあります。データに基づいた客観的な視点と、経営者としての経験や洞察を組み合わせることで、越境EC事業を海外で成功させるための道を切り拓いていただければ幸いです。

もし、どのようなデータを見れば良いのか分からない、データ分析をどう改善に繋げれば良いのか判断に迷うといった場合は、越境ECの専門家や、データ分析に強い外部パートナーへの相談も検討してみてください。