【中小企業向け】越境ECサイト構築プラットフォーム徹底比較:自社に合った選び方と注意点
越境ECを始めるにあたり、「自社独自のECサイトを構築する」という選択肢を検討される経営者の方もいらっしゃるかと思います。モール型とは異なり、自社のブランディングを自由に表現でき、顧客データを詳細に分析できるなどのメリットがあるためです。
しかし、一口に「ECサイト構築」と言っても、様々な方法や利用できるプラットフォームが存在し、「どれを選べば良いのか」「何から考えれば良いのか」と迷われることも少なくないでしょう。特に越境ECとなると、言語や通貨、決済、物流など、国内向けにはない考慮事項が加わります。
この記事では、初めて越境ECサイト構築に挑戦される中小企業経営者の皆様に向けて、主要なサイト構築プラットフォームの種類とその特徴、自社に合ったプラットフォームを選ぶ際の比較ポイント、そして注意点について、専門用語を避けながら分かりやすく解説いたします。
越境ECサイト構築プラットフォームの種類
越境ECサイトを構築するためのプラットフォームは、大きく分けていくつかの種類があります。それぞれの特徴を理解することが、自社にとって最適な選択をするための第一歩となります。
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SaaS(サース)型プラットフォーム:
- 特徴: 事業者が提供するクラウド上のサービスを利用してサイトを構築・運用する形態です。専門的な技術知識があまりなくても、比較的容易に始められます。月額費用を支払って利用するのが一般的です。
- メリット:
- 迅速にサイトを立ち上げやすい。
- システムの保守やアップデートは事業者が行うため、運用負担が少ない。
- 多くの機能(決済連携、マーケティングツールなど)が標準で備わっているか、アプリで追加できる。
- サーバー管理などが不要。
- デメリット:
- デザインや機能のカスタマイズに制限がある場合がある。
- 月額費用や決済手数料がかかる。
- ベンダー(事業者)に依存するため、ベンダーの仕様変更やサービス終了のリスクがある。
- 越境EC向けの代表例: Shopify、BigCommerceなど
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オープンソース型プラットフォーム:
- 特徴: プログラムのソースコードが無償で公開されており、誰でも自由に改変して利用できる形態です。自社でサーバーを用意し、システムをインストールして構築します。
- メリット:
- デザインや機能を自由にカスタマイズできる。
- ランニングコスト(月額費用)は比較的抑えられる場合がある(サーバー費用などは別途必要)。
- ベンダーに依存しない。
- デメリット:
- 構築や運用、保守に専門的な技術知識が不可欠。
- セキュリティ対策やアップデートを自社で行う必要がある。
- 初期費用やカスタマイズ費用が高額になる傾向がある。
- 問題発生時の自己解決能力が必要。
- 越境EC向けの代表例: Magento(現在はAdobe Commerce)、EC-CUBE(越境対応はカスタマイズが必要)など
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パッケージ型プラットフォーム:
- 特徴: 事業者からECサイト構築のためのシステムパッケージを購入し、自社で用意したサーバーにインストールして利用する形態です。
- メリット:
- オープンソース型よりは比較的容易に構築できる場合がある。
- ある程度のカスタマイズが可能。
- デメリット:
- SaaS型に比べて初期費用が高額になる傾向がある。
- システムのアップデートや保守は自社で行うか、別途費用をかけて事業者に依頼する必要がある。
- 越境ECに特化したパッケージは多くない。
中小企業が初めて越境ECサイトを構築する場合、技術的なハードルや運用負担を考慮すると、SaaS型プラットフォームが有力な選択肢となることが多いです。ただし、自社の状況や将来の展望によっては、他の選択肢も検討する価値があります。
主要な越境ECサイト構築プラットフォームの比較(SaaS型を中心に)
ここでは、中小企業が検討しやすい代表的なSaaS型プラットフォームを中心に、越境ECの視点から比較します。
| プラットフォーム名 | 特徴(越境EC関連) | 費用体系 | メリット | デメリット |
| :----------------- | :--------------------------------------------------------------------------------- | :------------------------ | :--------------------------------------------- | :------------------------------------------------- |
| Shopify | ・多言語・多通貨対応が比較的容易(アプリやテーマで対応)
・豊富な越境EC関連アプリ
・海外決済サービス連携多数
・世界的な知名度と豊富な情報 | 月額費用+決済手数料 | ・手軽に始められる
・デザインテンプレートが豊富
・アプリで機能拡張しやすい
・情報が多い | ・日本語でのサポートや情報が限定的な場合がある
・決済手数料がかかる |
| BigCommerce | ・標準機能で多言語・多通貨対応が可能
・高機能な在庫管理・販促機能
・エンタープライズ向け機能も充実 | 月額費用+取引額に応じた制限 | ・標準機能が充実している
・大規模展開にも対応可能 | ・Shopifyに比べ情報が少ない
・一部機能は上位プランのみ |
| Magento (Adobe Commerce) | ・自由度の高いカスタマイズが可能
・大規模ECサイト構築に強い
・多言語・多通貨対応は標準機能 | 構築・運用費用+ライセンス料(Adobe Commerceの場合) | ・高い拡張性と自由度
・複雑な要件に対応可能 | ・非常に高い技術知識が必要
・構築・運用コストが高い
・中小企業にはオーバースペックになりがち |
※上記は一般的な特徴であり、詳細な機能や費用はプランによって異なります。
多くのSaaS型プラットフォームは、基本的な越境EC機能(多言語・多通貨表示、海外決済連携など)を備えていますが、自社のビジネスモデルやターゲット市場に合わせて、どのような機能が必要かを見極めることが重要です。
自社に合ったプラットフォームを選ぶ際の比較ポイント
プラットフォームの種類や特徴を理解した上で、実際に自社に合ったものを選ぶ際には、以下のポイントを比較検討しましょう。
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費用:
- 初期費用: サイト構築にかかる最初の費用です。SaaS型は無料~比較的安価な場合が多いですが、デザインカスタマイズや初期設定を外部に依頼する場合は別途費用がかかります。オープンソース型は、サーバー費用や構築を依頼する費用が高額になりがちです。
- ランニングコスト: 月額利用料、決済手数料、システム保守費用など、サイト運用にかかる継続的な費用です。売上や取引件数に応じて変動する場合もあります。越境ECでは為替変動も考慮する必要があります。
- 追加機能・カスタマイズ費用: 標準機能で不足する場合、アプリの利用料や個別のカスタマイズ開発費用がかかります。
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越境EC対応機能:
- 多言語・多通貨対応: ターゲット国の言語や通貨に対応できるか、その設定は容易かを確認します。自動翻訳機能の有無や、手動での翻訳のしやすさも重要です。
- 決済方法: ターゲット国で一般的な決済方法(クレジットカード、PayPal、特定のローカル決済など)に対応しているかを確認します。決済手数料率も比較ポイントです。
- 物流連携: 海外発送に必要な送り状発行システムや運送会社との連携機能があるか、または連携できるアプリがあるかを確認します。
- 税金・関税設定: ターゲット国の消費税や関税の表示・計算に対応できるかを確認します。これは非常に複雑な要素です。
- ローカライズの自由度: ターゲット国の文化や商習慣に合わせて、デザインやコンテンツ、購入プロセスなどをどの程度変更できるか(ローカライズの自由度)も確認しましょう。
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必要な機能と拡張性:
- 商品管理: 海外向けの商品情報(単位、サイズ表記など)を管理しやすいか。
- 顧客管理: 海外顧客の情報を適切に管理できるか。
- 販促・マーケティング機能: クーポン、セール設定、SEO(検索エンジン最適化)機能、SNS連携、メールマーケティング連携など、売上を伸ばすための機能が充実しているか。
- 分析機能: 売上データ、顧客行動データ、アクセスデータなどを越境ECの視点で分析できるか。
- 拡張性: 将来的に商品数が増えたり、ターゲット市場を拡大したりする際に、システムが対応できるか、機能を追加しやすいかを確認します。
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運用体制と技術レベル:
- 社内リソース: サイトの構築、日々の運用、保守、トラブル対応などを社内で行うか、外部に委託するかを検討します。SaaS型は社内リソースが少なくても運用しやすいですが、オープンソース型は専門知識を持つ人材や外部ベンダーとの連携が不可欠です。
- サポート体制: プラットフォーム提供事業者や外部ベンダーのサポート体制を確認します。特に越境ECにおいては、時差や言語の壁があるため、スムーズなサポートが受けられるかは重要です。日本語でのサポートがあるかも確認しましょう。
プラットフォーム選びで失敗しないための注意点
プラットフォーム選びは越境EC成功の重要な鍵ですが、安易に決めてしまうと後々問題が発生することもあります。以下の点に注意しましょう。
- 安さだけで選ばない: 月額費用が安くても、必要な機能がオプションで高額になったり、決済手数料が高かったりすることがあります。トータルの費用対効果で比較することが重要です。
- デモやトライアルを活用する: 多くのプラットフォームは無料トライアル期間を設けています。実際に触ってみて、管理画面の使いやすさや設定のしやすさを確認しましょう。
- 越境ECの実績を確認する: そのプラットフォームが越境ECにおいてどの程度の実績があるか、どのような規模・業種で利用されているかを確認することも参考になります。
- 外部の専門家の意見を聞く: ECサイト構築や越境ECに詳しいコンサルタントや開発会社に相談し、第三者の視点からのアドバイスを得ることも有効です。自社の状況に合った最適なプラットフォームを提案してもらえる可能性があります。
- 契約内容をよく確認する: 利用規約、費用体系、解約条件、サポート内容などをしっかりと確認し、不明な点は事前に問い合わせましょう。特に長期契約を検討する場合は慎重に進める必要があります。
まとめ
越境ECサイト構築プラットフォーム選びは、自社のビジネス戦略や予算、社内体制に合わせて慎重に行うべき経営判断です。SaaS型、オープンソース型など、それぞれにメリット・デメリットがあります。
まずは自社の状況をしっかりと分析し、どのような機能が必要か、どの程度のコストをかけられるか、社内の運用体制はどうするかといった点を明確にすることから始めましょう。そして、複数のプラットフォームを比較検討し、可能であれば実際に試してみて、自社にとって最も「使いやすく」「必要な機能が備わっており」「将来の成長にも対応できる」プラットフォームを見つけることが、越境EC成功への第一歩となります。
判断に迷う場合は、越境ECに詳しい専門家や実績のあるベンダーに相談することも、リスクを減らし、成功確率を高めるための有効な手段です。