初めての越境EC:海外顧客に響く商品写真・動画の基本戦略【中小企業向け】
越境ECに挑戦される中小企業の皆様、こんにちは。
初めて越境ECに取り組む際、商品の選定や物流、決済方法など、考えるべきことは多岐にわたります。その中でも、海外の顧客に自社商品をどのように魅力的に伝えるかは、売上を左右する極めて重要な要素です。海外のお客様は、商品を手に取って見たり、試着したりすることができません。そのため、ウェブサイト上の写真や動画といった視覚情報が、購入の意思決定に大きな影響を与えます。
この情報サイトでは、越境ECを始める中小企業経営者の皆様に向けて、越境ECにおける商品写真・動画の重要性と、海外顧客に響くコンテンツ作成の基本戦略について解説いたします。
越境ECにおいて商品写真・動画が重要な理由
国内でのオンライン販売においても商品写真は重要ですが、越境ECにおいてはその重要性がさらに高まります。その主な理由をいくつかご紹介します。
- 物理的な距離: 海外の顧客は商品を直接見たり触ったりすることができません。そのため、写真や動画が唯一の「商品との接点」となります。
- 言語の壁: 商品説明文を丁寧にローカライズ(現地の言語や文化に合わせて最適化すること)したとしても、言葉だけでは伝わりにくいニュアンスや商品の質感、サイズ感、使用方法などを視覚的に伝えることが効果的です。
- 文化的な違い: 国や地域によって、商品の使われ方や魅力に感じるポイントが異なる場合があります。ターゲットとする文化圏に合わせた写真や動画を準備することで、より共感を呼びやすくなります。
- 信頼性の構築: 高品質でプロフェッショナルな商品写真や動画は、企業の信頼性やブランドイメージ向上に貢献します。「きちんと商品を見せてくれる会社だ」という安心感は、初めて取引する海外顧客にとって重要な判断材料となります。
これらの理由から、越境ECサイトの商品ページは、単に商品の情報を提供するだけでなく、海外顧客の興味を引き、信頼を獲得し、購入へと繋げるための重要な「売り場」としての役割を果たします。そして、その「売り場」で最も効果的なツールの一つが、高品質な写真と動画なのです。
海外顧客に響く商品写真の基本
越境ECで成果を出すためには、単に商品を写すだけでなく、海外の顧客の視点を意識した写真作りが求められます。以下に基本的なポイントを挙げます。
- 高解像度・高品質: スマートフォンでも高品質な写真が撮れる時代ですが、可能であればプロ仕様のカメラや照明 equipment(機材)を使用し、鮮明で細部まで確認できる写真を準備しましょう。特に、商品の質感や色味を正確に伝えることが重要です。
- 多角度からの撮影: 商品の全体像はもちろん、様々な角度から撮影した写真を掲載します。商品の裏側や側面、底面など、顧客が実物を見るかのように確認できるように配慮します。
- ディテールの強調: 特徴的なデザイン、機能部分、素材感、縫製など、商品の細部をクローズアップした写真を複数用意します。品質の高さやユニークな点を視覚的にアピールできます。
- サイズ感を示す: 商品単体の写真だけでは、実際のサイズが分かりにくい場合があります。他の一般的なもの(例: ペットボトル、硬貨、一般的なサイズの家具など)と一緒に写したり、モデルが使用しているシーンを撮影したりすることで、サイズ感を具体的に伝えます。寸法を数値で表示するだけでなく、視覚的な補助があると理解しやすくなります。
- 使用シーン・ライフスタイル: 商品がどのように使われるのか、使用することでどのようなメリットがあるのかをイメージできる写真を用意します。例えば、調理器具なら料理中の写真、アパレルならモデルの着用写真、インテリア雑貨なら部屋に置いた写真などです。ターゲットとする国の文化やライフスタイルに合わせたシーン設定を検討しましょう。
- シンプルな背景: 基本的には、商品が際立つように白や明るい単色の背景で撮影することをおすすめします。ただし、使用シーンを示す写真はこの限りではありません。背景に余計な情報が入ると、商品への集中が妨げられる可能性があります。
- ローカライズへの配慮: 写真に写り込んでいる文字(例: 商品パッケージの日本語表示)は、可能であれば英語やターゲット言語に修正するか、別途翻訳情報を提供しましょう。また、写真に登場するモデルの服装や髪型、背景などに、ターゲット市場の文化にそぐわない要素がないか確認が必要です。
海外顧客に響く商品動画の基本
商品写真だけでは伝えきれない、商品の動きや使い方、雰囲気、ストーリーなどを伝えるには動画が有効です。
- 商品の特徴を伝える: 動画は商品の機能や使い方を実演するのに最適です。複雑な組み立てが必要な商品であれば組み立て方を、家電製品であれば操作方法などを分かりやすく見せます。
- 使用シーンを体験させる: 写真よりもさらに臨場感を持って、商品が使われているシーンや、使用することで得られる体験、ライフスタイルを表現できます。ターゲット顧客が「これを使っている自分の姿」をイメージしやすいような動画を目指します。
- 短く分かりやすく: 長すぎる動画は視聴されにくい傾向があります。商品の主要な魅力や使い方のハイライトを捉え、短くテンポの良い動画を作成しましょう。商品の種類にもよりますが、30秒~1分程度の動画が効果的とされることが多いです。
- 音声・字幕の扱い:
- 音声: BGMだけでも良い場合もあれば、ナレーションや説明音声を加える必要がある場合もあります。ナレーションを入れる場合は、ターゲット言語に対応させるか、英語ナレーションにターゲット言語の字幕をつけるなどの工夫が必要です。
- 字幕: 動画の内容を正確に理解してもらうために、字幕は非常に重要です。特に、ターゲット市場の言語での字幕は必須と考えましょう。動画を視聴する環境によっては音声が出せない場合もあるため、字幕があればより多くの顧客に内容を伝えることができます。
- 文化的な配慮: 写真と同様、動画の内容(登場人物、設定、表現方法など)が、ターゲット市場の文化や習慣に合っているか確認が必要です。特定の文化圏でタブーとされている表現がないかなどを事前にリサーチしましょう。
費用について:自社でやる?プロに依頼する?
高品質な写真や動画を準備するには、ある程度の費用や手間がかかります。中小企業の状況に応じて、いくつかの方法が考えられます。
- 自社で撮影・編集: スマートフォンや比較的安価なカメラ、編集ソフトを使って自社で行う方法です。初期費用を抑えられますが、専門的な知識や技術がない場合、品質が十分でなかったり、多くの時間がかかったりする可能性があります。品質が低いと逆に信頼性を損なうリスクもあります。
- プロのカメラマン・制作会社に依頼: 費用はかかりますが、専門的な技術と設備により、高品質で効果的な写真・動画を作成できます。越境ECの実績がある制作会社であれば、海外市場を意識した撮影ノウハウを持っている場合もあります。商品の魅力を最大限に引き出し、信頼感を高めるためには有効な選択肢です。
- クラウドソーシングを活用: 比較的安価にプロに依頼できる場合もありますが、品質のばらつきやコミュニケーションの難しさといった課題もあります。
どのような方法を選択するにしても、「どのような写真・動画が必要か」という企画段階が最も重要です。ターゲット顧客に何を伝えたいのか、商品のどのような点をアピールしたいのかを明確にした上で、最適な方法を選びましょう。
成功・失敗事例から学ぶこと
越境ECにおける商品写真・動画の成功・失敗事例から学べる点は多々あります。
成功事例から学ぶこと:
- 徹底したローカライズ: ターゲット市場の文化、習慣、美的感覚に合わせた写真・動画を作成した事例。例えば、イスラム圏向けに肌の露出を控えたモデルを起用したり、特定の国の風景を背景に使ったりするなど、顧客が「自分のための商品だ」と感じるような工夫がなされています。
- ストーリーテリング: 単に商品を写すだけでなく、商品の開発背景や、それがもたらす生活の変化といった「ストーリー」を伝える動画。感情に訴えかけ、ブランドへの共感を高めます。
- ユーザー生成コンテンツの活用: 実際の顧客が商品を使っている写真や動画をサイトに掲載する。これにより、商品の信頼性が高まり、他の顧客の購入意欲を刺激します。ただし、海外顧客のコンテンツ利用規約には注意が必要です。
失敗事例から学ぶこと:
- 文化的なタブー: 意図せず、ターゲット市場の文化や宗教において不適切とされる表現(色、ジェスチャー、シンボルなど)を使ってしまい、炎上や不買運動に繋がった事例。事前の十分なリサーチと、現地の視点を取り入れることの重要性を示しています。
- 不明瞭な写真・動画: 低解像度、暗い、ブレている、商品が見にくい写真や動画。商品の魅力が伝わらないだけでなく、「怪しい」「信頼できない」といった印象を与え、離脱率や返品率を高める原因となります。
- 一方的なアピール: 売り手が伝えたいことだけを一方的にアピールし、顧客が知りたい情報(サイズ感、使い方、耐久性など)が欠けている写真や動画。顧客の疑問や不安を解消する視点が欠けています。
これらの事例から、越境ECにおける商品写真・動画は、単なる「見栄え」だけでなく、海外顧客への深い理解と信頼構築のための重要なツールであることが分かります。
まずは何から始めるべきか
初めて越境ECに取り組む中小企業の皆様が、商品写真・動画の準備を始めるにあたって、最初に行うべきステップは以下の通りです。
- ターゲット顧客の明確化: どのような国・地域のお客様に届けたいのか、そのお客様はどのような文化や価値観を持っているのかを改めて確認します。
- アピールポイントの洗い出し: 自社商品のどのような点が、ターゲット顧客にとって魅力となるのかをリストアップします。機能、品質、デザイン、ストーリーなど、具体的に考えます。
- 必要なコンテンツのリストアップ: 洗い出したアピールポイントを伝えるために、どのような種類(全体像、詳細、使用シーンなど)の写真が何枚必要か、どのような内容の動画が必要かを具体的にリストアップします。
- リソース(予算・人材・時間)の確認: 自社内でどこまで対応できるか、外部に委託する必要があるかを検討し、予算とスケジュールを立てます。
- 競合サイトの研究: 競合する海外のECサイトが、どのように商品写真・動画を見せているかを研究し、参考にします。
これらのステップを踏むことで、闇雲に撮影・制作を始めるのではなく、目的意識を持って効果的なコンテンツ準備に進むことができるでしょう。
まとめ
越境ECにおける商品写真・動画は、海外顧客に商品を理解してもらい、信頼を獲得し、購買意欲を高めるための不可欠な要素です。商品の高品質な情報提供はもちろんのこと、ターゲット市場の文化や習慣への配慮、そして商品の魅力を最大限に引き出すための戦略的な企画が成功の鍵となります。
最初から完璧なものを用意することは難しいかもしれませんが、まずはできる範囲でこれらの基本原則を意識し、少しずつ改善を重ねていくことが重要です。海外のお客様に自社商品の魅力がしっかりと伝わるよう、今回ご紹介した内容が皆様の越境ECへの第一歩を踏み出す一助となれば幸いです。