中小企業向け越境EC入門

越境ECで物流を最適化:海外倉庫の活用と在庫リスク対策【中小企業向け】

Tags: 越境EC, 物流, 海外倉庫, 在庫管理, 中小企業, 経営判断

越境ECに挑戦される中小企業の経営者の皆様、こんにちは。

越境ECの成功には、優れた商品を開発・販売するだけでなく、海外のお客様へ確実に商品をお届けする「物流」が非常に重要です。これまで国内で培った物流のノウハウが、そのまま海外で通用するとは限りません。特に、海外のお客様から近い場所に商品を保管する「海外倉庫」の活用は、物流の効率化と顧客満足度向上に大きく寄与する可能性があります。

しかし、海外倉庫の利用にはコストや管理の手間も伴います。本稿では、中小企業の経営者が、海外倉庫を活用すべきかどうかの判断に必要な情報と、越境ECにおける在庫管理の基本的な考え方について解説いたします。

越境ECにおける物流の課題と海外倉庫活用の可能性

初めて越境ECに取り組む際、多くの中小企業は、まず日本国内から海外のお客様へ商品を発送する方法を検討されるかと思います。郵便事業者の国際郵便や、国際宅配便サービスなどが選択肢となります。これらの方法は、少量・多品種の発送には適しており、初期費用を抑えられるメリットがあります。

しかし、事業が成長し、特定の国や地域への販売量が増えてくると、国内からの発送だけではいくつかの課題が出てきます。

  1. 配送リードタイムが長い: 海外のお客様へ商品が届くまでに時間がかかり、顧客満足度の低下につながる可能性があります。
  2. 送料コストが高い: 国際送料は、商品のサイズや重量、配送先によって高額になる傾向があり、利益を圧迫する要因となります。
  3. 返品対応が複雑: 海外からの返品には、お客様と事業者の双方にとって手続きやコストの負担が大きくなります。
  4. 繁忙期に対応しづらい: 特定のセール期間やイベント時には注文が集中し、国内の体制だけでは迅速な発送が困難になる場合があります。

これらの課題を解決する一つの有効な手段が、「海外倉庫」の活用です。海外倉庫とは、その名の通り、海外の主要な消費地に商品を保管し、そこからお客様へ商品を発送する仕組みです。代表的なものとしては、Amazonが提供するFBA(フルフィルメント by Amazon)のようなサービスがあります。

海外倉庫(FBAなど)活用のメリット

海外倉庫を活用することで、以下のようなメリットが期待できます。

海外倉庫活用のデメリット・リスク

一方で、海外倉庫の活用にはデメリットやリスクも存在します。

海外倉庫利用の判断ポイント

自社にとって海外倉庫を活用すべきかどうかを判断するためには、以下の点を総合的に考慮する必要があります。

まずは、販売量が多い特定の国や、物流効率改善のインパクトが大きい商品を対象に、限定的に海外倉庫利用を検討する「スモールスタート」も有効な手段です。

越境ECにおける在庫管理の基本

海外倉庫を利用するかどうかにかかわらず、越境ECにおいては正確で効率的な在庫管理が不可欠です。

まとめ:海外倉庫の活用は経営判断

海外倉庫の活用は、越境ECの物流効率を大幅に改善し、事業拡大の追い風となる可能性があります。しかし、それにはコスト増や管理の複雑化が伴います。中小企業の経営者として、自社の販売状況、商品特性、ターゲット市場の状況、そして物流コスト全体を俯瞰的に分析し、海外倉庫を利用すべきかどうかの「経営判断」を行うことが重要です。

まずは、少量の商品を特定の海外倉庫に預けてみるなど、リスクを抑えた形で試行し、効果を検証することも有効なアプローチです。物流の最適化は、越境ECビジネス全体の収益性と持続的な成長に直結する重要な要素であることをご理解いただき、慎重かつ戦略的に検討を進めていただければ幸いです。