中小企業向け越境EC入門

【中小企業向け】越境EC準備段階で経営者が押さえるべき「法規制・税金」基本の確認ステップ

Tags: 越境EC, 法規制, 税金, 関税, 準備, 経営判断

越境ECへの挑戦は、新たな市場開拓の大きな可能性を秘めていますが、同時に様々なリスクも伴います。特に、海外市場の法規制、税金、そして関税に関する理解と準備は、見落とすと事業継続に大きな影響を与える可能性があります。初めて越境ECに取り組む中小企業の経営者の皆様にとって、「何から確認すれば良いのか」「どのようなリスクがあるのか」といった点は、判断に迷うことも多いかと存じます。

本記事では、越境ECの準備段階において、経営者の皆様が押さえておくべき海外市場の法規制・税金・関税に関する基本的な考え方と、具体的な確認ステップについて分かりやすく解説いたします。安全かつ着実に越境EC事業を進めるための判断材料として、ぜひご活用ください。

越境ECにおける法規制、税金、関税の基本理解

越境ECでは、商品を販売する日本国内の法律だけでなく、商品を購入する側の国や地域の法律やルールにも従う必要があります。これらは主に「法規制」「税金」「関税」の3つに分類できます。

1. 法規制

対象となる国や地域には、様々な法規制が存在します。これらは、販売する商品の種類、販売方法、広告表示などに関わります。

これらの規制に違反した場合、商品の販売停止、罰金、税関での没収、さらには企業の信用失墜といった深刻な事態につながる可能性があります。

2. 税金

商品を販売する国の税金がかかる場合があります。最も一般的なのは、日本の消費税にあたる付加価値税(VAT: Value Added Tax)や物品サービス税(GST: Goods and Services Tax)といった消費税です。

多くの国では、一定額以上の取引がある場合、越境EC事業者でもその国の消費税の申告・納付義務が発生します。税率や基準は国によって大きく異なります。例えば、欧州連合(EU)ではVAT One Stop Shop (OSS) 制度など、越境EC事業者向けの特別な制度もあります。また、販売する国の所得税の申告義務が発生するケースもあり得ます。

税金の申告・納付を怠ると、追徴課税や罰金が課せられるリスクがあります。

3. 関税

関税は、国境を越えて商品を移動させる際に課せられる税金です。通常、購入者(輸入者)が負担することが多いですが、販売者である越境EC事業者がDDP(Delivered Duty Paid:関税込みの価格で販売し、販売者が関税や輸入消費税を負担して購入者のもとへ届ける)形式で販売する場合は、販売者が負担します。

関税率は、商品の種類(HSコードと呼ばれる国際的な分類コードで決まります)、商品の原産国、輸入国によって異なります。関税がかかるかどうかの基準額(免税範囲)も国によって様々です。

関税の見込み額が不明確な場合、購入者が想定外の費用負担に不満を感じ、購入をキャンセルしたり、トラブルに発展したりする可能性があります。また、DDP形式で販売する際には、正確な関税・税金の見積もりが利益計算に不可欠です。

越境EC準備段階での具体的な「確認ステップ」

これらの法規制、税金、関税について、越境ECを始める前に具体的にどのように確認を進めるべきか、そのステップを解説します。経営者の皆様は、このプロセスを理解し、社内担当者や外部パートナーに適切な指示を出すことが重要です。

ステップ1:ターゲット国と販売商品の明確化

まず、どの国や地域で、具体的にどのような商品を販売するのかを明確にします。これが定まらなければ、どの国の、どのようなルールを確認すべきか特定できません。

これらをリストアップすることから始めます。

ステップ2:必要な情報の特定と項目整理

次に、ステップ1で明確にした「ターゲット国」と「商品」に基づき、具体的に確認すべき法規制、税金、関税の項目を整理します。チェックリスト形式で洗い出すと漏れを防ぎやすくなります。

ステップ3:信頼できる情報源からの情報収集

整理した確認項目に基づき、情報収集を行います。インターネット検索だけでは不正確な情報も多いため、信頼できる公的な情報源や専門機関を活用することが非常に重要です。

特に、法規制や税制は頻繁に変更される可能性があるため、常に最新の情報を確認することが必要です。

ステップ4:社内体制の構築と外部専門家の活用検討

収集した情報を基に、リスクを評価し、対応策を検討します。このプロセスを適切に進めるためには、社内での役割分担を明確にし、必要に応じて外部専門家の活用を検討することが現実的です。

経営判断のポイント

これらの確認ステップを経て得られた情報に基づき、経営者として以下の点を判断する必要があります。

これらの判断は、越境EC事業全体の計画や予算、リスク戦略と連携させて行う必要があります。完璧な情報収集やリスク排除は困難であることを理解しつつも、主要なリスクを見落とさないための「最低限必要な確認」を実施することが、中小企業にとっては現実的かつ重要です。

まとめ

越境ECにおける法規制、税金、関税の確認は、事業を始める前の重要な準備段階です。これらのルールを理解し、適切に対応することで、予期せぬトラブルやコスト発生のリスクを大幅に減らすことができます。

初めて越境ECに挑戦する中小企業の経営者の皆様は、本記事で解説した確認ステップを参考に、まずはターゲット国と販売商品を明確にし、必要な情報の項目を整理してください。そして、信頼できる情報源を活用し、必要に応じて外部の専門家の力を借りながら、着実に確認作業を進めていくことが成功への鍵となります。

準備段階での丁寧な確認と適切な経営判断が、海外市場での事業を安定させる土台となります。ぜひ、これらのステップを越境EC事業計画に組み込んでください。